朝食を抜くと何が起きるか ― 代謝・脳・血糖値から見たリスク
朝食を抜くと本当に痩せるのか?
「朝ごはんを抜くと痩せやすい」――そう考える人は少なくありません。
しかし栄養学的に見れば、それは真逆です。
実は朝食を抜くことにメリットはなく、むしろ体に大きな負担を与えてしまうのです。
では、朝食を抜くと私たちの体の中でどんなことが起こるのでしょうか?
このあと、その理由を栄養学の視点から詳しく解説していきます。
ここでは栄養学の観点から、その理由をロジカルに解説します。
1. 代謝の低下 ― なぜ「太りやすい体」に傾くのか
人の体は、エネルギーが入らないと「次にいつ食べられるかわからない」と判断し、省エネモードに入ります。
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朝食を抜くと 肝臓のグリコーゲン(糖の貯蔵庫)が減少
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体は筋肉を分解してエネルギーを補おうとする(=異化作用)
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一方で脂肪はできるだけ温存しようとする
さらに朝食を食べないことで、食事誘発性熱産生(DIT) が働きません。
👉 DITとは?
食べ物を消化・吸収するときに発生するエネルギー消費のこと。
栄養素によって消費率が異なり、特にタンパク質は摂取カロリーの 20〜30% がDITで消費されます。
一方で、炭水化物は約5〜10%、脂質はわずか0〜3%程度。
つまり、タンパク質を含む朝食をとること自体が「エネルギーを使う行為」 であり、
実はダイエットに適した仕組みを持っています。
朝食を抜けば、こうした自然なエネルギー消費の機会を失い、結果として 「太りやすい体」 へと傾いてしまうのです。
2. 脳のエネルギー不足 ― なぜ集中できなくなるのか
脳は体重のわずか2%しかない臓器ですが、全エネルギーの約20% を消費します。
しかも燃料はほぼ ブドウ糖オンリー。
👉 ケトン体とは?
脂肪酸が分解されてできる物質で、ブドウ糖が極端に不足したときに脳の代替燃料となります。
ただし、ケトン体をエネルギーにするには 長時間の絶食や厳格な糖質制限 が必要で、朝食を抜いた程度では十分に使えません。
そのため、朝食を抜けば――
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血中のブドウ糖が不足
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前頭前野(集中・判断・記憶を司る部位)の働きが低下
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午前中の作業効率が落ちる
という流れが起こり、パフォーマンスは確実に下がります。
3. 血糖値の乱高下 ― なぜ眠気と脂肪蓄積につながるのか
長時間空腹のあとに昼食をとると、血糖値は急上昇します。
体はこれを調整するために インスリンを大量分泌。
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余分な糖は脂肪として蓄積
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その後、血糖値は急降下
このときに起こるのが――
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強い眠気
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倦怠感
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集中力の低下
👉 インスリンとは?
膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる唯一の働きを持ちます。
ただし過剰に分泌されると、糖は「脂肪」として蓄えられやすくなり、ダイエットの妨げとなります。
つまり朝食を抜くと、「太りやすさ」と「午後のパフォーマンス低下」 がセットでやってくるのです。
まとめ
「朝食を抜けば痩せる」という考えは誤解です。
代謝低下:DITが働かず、筋肉が分解され、脂肪をため込みやすい
脳のエネルギー不足:ブドウ糖欠乏により集中力や判断力が低下
血糖値の乱れ:急上昇と急降下により眠気や脂肪蓄積を招く
朝食は 体と脳を整え、一日の代謝をスタートさせるスイッチ です。
特にタンパク質を含む朝食は、代謝を高めるうえで大きな意味を持ち、健康維持に必須でありながら、結果的にダイエットにも有効な習慣といえるのです。